
昔から闇金ウシジマくんが好きだったので、期待して視聴。
めちゃめちゃ面白い! そして深い作品でした。
司法、そして悪人……普段の仕事からは少し縁遠い世界を描いたドラマでしたが、主人公のある言葉がこつんと頭に当たったようでした。
【ドラマ】九条の大罪の概要(あらすじ)
繁華街の一角、弁護士・九条間人が開いている弁護士事務所がある。ビルの屋上でテント生活を送る九条の信条は、依頼人を貴賤や善悪で選別はしない、というもの。
そんな九条のもとには半グレ、ヤクザ、前科持ちetc…訳ありな人々が助けを求めて訪れる。世間からは悪人を弁護する悪徳弁護士と罵られる九条。
それでも九条は、依頼人の話を聞き、その利益のために働き続ける。九条は、弁護士だ。
1. 九条の大罪 をケアマネ視点で視る:知らない、という不利益
九条は数多くの名言を口にしますが、私の心に残ったのはドラマの第一話で彼が口にする一言。
「無知というのは本当に罪ですね」
これ、なんかすごい心に響きました。それは、ケアマネという仕事の中でたびたび感じていたことだからです。
日本には(色々な意見はありますが)整った福祉制度があります。ただ、基本、制度は手を差し伸べてくれません。
自ら手を伸ばさなければ、その恩恵を受けられないのです。
例を挙げて考えてみましょう。
つつましく暮らすAさん。
・Aさんは長らく街の小さな金物屋さんとして働いてきた。
・景気のいい時期もあったが時代の流れでお店の経営は厳しかった。
・十年ほど前、年齢的な限界を感じてお店を廃業。
・以降は年金で生活をしてきた。月額の年金は6万程度。
・支払期間の関係で年金額が少ないAさんの生活は厳しい。
・それでも、自分のことは自分で、という信条のAさんは何とかやりくりをして生活している。
・外出先での転倒がきっかけで地域包括支援センターのかかわりが始まったAさん。
・インテーク(初回面談)でAさんの経済状況を確認した包括の職員が生活保護について提案。
・Aさんは言った。「生活保護、受けられるんですか?」
生活保護の申請には色々な条件がありますが、月の収入が国の決めた基準以下であることが大きな要件です。
Aさんの年金額は、たいていの地域で基準以下とされる金額だと思われます。
もしAさんがそのことを知ってさえいれば。
Aさんの生活はもっと違っていたでしょう。
介護保険は、たいていの人にとって、ある時突然必要になるものです。
一般の方が介護保険の制度の仔細を知っておく必要はありません。
ただ、介護のことで困ったら地域包括支援センターに相談に行けばいいんだ、ということ、いや、介護保険というものがあるらしい、ということさえ知っていただけていれば、事態は好転する可能性は高まります。
知っていること、ううん、知ろうとすること、はとても大切なことなのです。
・知識、恩恵は降ってこない。
・知識を得ることにはコストがかかる。
・知らないことの損失は量り切れない。
2.九条の大罪をケアマネが観る: 社会の構図を描く、ということ
闇金ウシジマくんの作者の方による原作の今作、もちろん、ちゃんとえげつないし、グロいです。
今回見て思ったのは、この方は弱者を弱く描くことが本当にお上手だな、ということ。
この社会で弱者がいかにして強者に食い散らかされていくのか、弱い者がいかに弱いままなのか……その過程が、目を背けたくなるほどのリアリティで描かれています。
そんな中、主人公である九条は極めてフラットな人物。特別な個性というものがあるわけではなく、彼はいわば制度・司法を体現した存在。
九条を没個性化させることで、弱者・強者・制度が存在する社会の一端を詳細に描けているのです。
正視に耐えない場面もたっくさん出てきます。特にSNSでも話題になった、第一話。
簡単に説明すると……。
・ひき逃げの案件。
・被害者は父親と片足を失った少年(の母親)。
・加害者は飲酒運転+ながら運転のチンピラ。
・九条はチンピラの弁護人。
・チンピラは九条の尽力もあり執行猶予に。
・親子は割に合わない賠償金で手を打ってしまう。
・疲れ果てた母親は、損害回復の裁判を諦めてしまう。
……めちゃめちゃ胸糞です。でも、チンピラも、九条も、制度に則って正規の手続きを踏んだに過ぎない。
……これ、きっと現実です。
このドラマは、見たくないけど私達のそばにある現実を見せてくれます。
見るに堪えない悲劇、過酷な日常……。
見たくないものをありありと描いた作品です。


3.【まとめ】知るコスト、知ろうとする勇気
さて、今作が激重・胸糞な内容であることは伝わったと思います。
そのあとに続くエピソードもえげつないです。でも、「あー、ありそうだな」という内容。うぅ……。
私達が暮らすこの社会は、困っていたら空から救いの手が差し伸べられるような天国ではありません。
でも、地獄というわけでもない。
私達がこの社会で強者の養分になってしまわないためには、知るコスト、知ろうとする行動力と勇気が必須。
確かに九条は悪人の弁護もします
でも、きっと私達の味方にもなってくれるはずです。
だって彼は依頼人を貴賤や善悪で選別はしない、のですから。
知らないことを知ること、知ろうとすることには負担が伴います。
でもきっと、生きていくためには必要なことなのです。
九条の大罪、こんな人におすすめ!
・予定調和のドラマに飽き飽きしている方
・えぐくても現実を垣間見たい方
・知る勇気を持ちたい方

正直、見るのに勇気がいるドラマですし、人を選ぶドラマです。
でも、見る価値がある物語でもあります。
目を背けない勇気がある方は是非。
原作コミックを何度も読みたい方へ
勇気を持って別の環境を知りたい方へ

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
▼ 詳しいプロフィールは以下。▼


コメント