
支援者が、支援によって『救われる』のは間違いでしょうか……?
殺し屋と少女が孤独を埋め合う様が感動的な今作。よくよく見てみるとピアサポートに通じる気がしました。
本来避けるべきシャドウワーク、その中で私が感じた救い……。家賃滞納に奔走した事例を通じ、支援者の根本的な欲求について考察します。
【映画】LEON レオン のあらすじ(物語の概要)
ニューヨークの片隅。レオンはきっちり仕事をし、ミルクを飲み、観葉植物を愛する殺し屋。身寄りもなく、黙々と同じ日々を繰り返している。
隣室に住むマチルダは12歳。麻薬取引を生業とする父親とその継母、異母姉とも不仲だったが、家の中でたった一人、幼い弟だけを愛している。
父親が組織の制裁を受けたことでマチルダは家族を失う。愛していた弟までも……。
ひょんなことからマチルダを匿うことになったレオン、二人の奇妙な共同生活は互いを補い合うようで、次第に心を通い合わせていくようになる。
しかし、その平穏も長く続くことはなく……。
1.LEON レオンをケアマネ視点で視る:孤独が繋ぐピア的な関係+私の個人的体験
今更言うまでもない名作中の名作。
今まではレオンの可愛さだったり、マチルダの背伸びした少女感にメロメロだったわけですが、今回見返して、ふと思いました。
レオンとマチルダの関係って、もしかしてピア、なんじゃない?
ピアとは、『「同じような立場の人によるサポート」といった意味で用いられる言葉である』とのこと(出典:Wikipedia:ピアサポート)。
ピアって、支援する側が、支援を通して癒される……という、いわば理想の支援の形、ではないでしょうか。
レオンは終わりない孤独を、マチルダもまた始まってしまったばかりの孤独の中で生きています。
たまたま同じアパートという偶然の中、孤独という一点を分かち合う、何もかも違う二人。
ストーリーが進んでいく中で、二人はそれぞれが生きる意味となっていきます。
レオンは失っていた生きる意味を取り戻し、マチルダは初めて、生きる意味を見出す……。
ピアサポートって、とくに精神障害分野でよく聞く言葉かなと思います。実践が進んでいるのもそういった方面なのかなぁと思ったり。
しかし、ピアって、継続が難しそうです。まぁ、当然といえば当然。双方が支援を必要とする可能性がある存在なのですから。
ピアは、多分、絶妙で奇跡的なバランスの上に成り立っているんだと思います。
ちょっとずれるかもしれませんが、例を挙げてみましょう。
手のかかるAさんとBケアマネ。
・Aさんは結婚歴のない女性。生活保護受給。
・若い頃に養子に出たので親類・兄弟とのかかわりはない。
・軽い足腰の筋力低下、文字の読み書きが苦手なこともあって週に二回のヘルパーさんによる支援を利用中。
・Bケアマネは支援導入の際からの付き合いで、関係も良好。
・一方、Aさんはお金の使い方の問題で大家さんへの家賃滞納などのトラブルが生じている。
こういう方、います。
ある程度自立されているのですが、ちょっとした、想定外の支援が必要、という方。
近くに親類の方がいれば全く問題ないのでしょうが、Aさんにはそういう存在はいません。
結局、ケアマネがせざるを得ないことに……。
・大家さんからこれ以上の滞納があると出て行ってもらう! という苦情がBケアマネに入る。
・Bケアマネが両者の仲裁に入り、返済計画を立て、毎月、保護支給日にAさんを訪問してお金を預かり大家さんに持っていくことに。
・その話をまとめた後、Aさんが「そういえばBさんって韓国の俳優に似てるね」と発言、なぜかBケアマネの疲れは霧散したのでした。
家族がいない、そして関係が良好、だからこそついついやりすぎてしまう……ケアマネが陥りがちな状況です。
いわゆる、シャドーワーク。
正しいかどうかは別として、こういう時、ケアマネって、妙な満足感を覚えがちなんですよね……。
もともと、福祉職をしている時点で、誰かに喜んでもらいたいって、そう思っている人も多いでしょうし……。
もしそれがBケアマネを精神的に支えていたとしたら、AさんとBケアマネの関係はある種のピアだった、のかもしれません。
素人の私が言うのもおこがましいですが、ピアって、それぞれにとってちょうどいいバランスで支援と負担があり、それが相互作用で双方をつないでいる……のではないでしょうか。
レオンとマチルダにはそんな奇跡が起こっていたんじゃないのか……今回改めて見てみて、そう感じました。

・ピアサポートって、難しい。
・でも、足元を見れば支援者だって、要支援者かも。
・補い合えれば、いいね。
孤独で繋がった二人の、奇跡のような日々と最後をその目で。
2.LEON レオンをケアマネが観る:その甘美さ、その中身、その理由
レオン、かぁいいですよね。尊い。かぁわいい。
そしてマチルダのあのぐぅっ、と背伸びをしている感じの少女像。その危うさを含めて、リスキーなキャラクターではありますが、であるが故に心に刺さる存在感があります。
おそらく、多くの方が今作の魅力と感じているのは、レオンとマチルダの日常のシーン。
レオンが暮らしの(彼なりの)ルールを伝えたり、仕事のやり方を教えたり、一方でマチルダが読み書きを教えてあげたり、クイズを出したり……。
そして、二人のささやかで温かな暮らしの舞台となったレオンのアパートの室内のおしゃれさ、可愛さ、温かさが、最後の戦闘シーンの切なさ、息苦しさに繋がっていく辺りの構成も秀逸……。
また、これ、レオンとマチルダの年齢差がまた絶妙。中年のおじさんと少女。無い、普通に考えて無い、そういう設定、ビジュアル。
だから、長続きしないだろうなぁ、この甘い時期は限定的なんだろうなぁ、と視聴者の無意識に伝わっていく。
その一時性・限定性が、物語への没入感、甘美さに、破滅に向かっていくことへの納得感と安心感を担保している……気がします。
人はハッピーエンドを喜ばしく思うもの。でも、終わってしまう、続かないけど輝くもの、に対して魅力を感じてしまうものでもあります。
今作の甘さは、いわば約束された破滅、にあるのではないでしょうか。
人は、壊れていくもの、消えていくものに美しさを感じてしまうもの、かも。
狂気に満ちた美しい破滅、一人死に場所を求めてたどり着いた破滅……よければどうぞ。
3.【まとめ】たぶん、私たちは一人じゃない
今作は、レオンとマチルダの儚くも尊い関係が破滅するのを楽しむ映画、とも言える気がします。
当初はレオンがマチルダを一方的に守っているのですが、やがてレオンもマチルダによってその人生を意味づけられ、そんな二人が共に生きようと願う……この世界にあって一瞬の奇跡のような物語。
この仕事をしていてよく思うのですが、支援をする側、受ける側、という関係は全然固定的ではないということ。
いつ、誰が、どういうタイミングで立場が逆転するとも限りません。
これは私の個人的感想なんですが、強く、自分の力で生きてきた、生き抜いてきた方ほど、支援を求められない傾向にあると思います。
もっと言えば、絶対必要な支援すら振り払われることも多い。
私達はいつでも、どんな形でも、その大小はあれ、誰かの支援の中で生きているということを今一度知っておくべきかなと思います。
私達は一人じゃないのです、多分。
LEON レオン、こんな人におすすめ!
・神作確定のマスターピースを見てみたい方。
・可愛いおじさんが好きな方。
・破滅に美しさを感じてしまう方。

色んな魅力が詰まった本作。
昔見て感動した覚えがある方、全然知らない方……公開されて32年(2026年現在)ですが、今でも全然色あせていません。ぜひ、映画史に輝くマスターピースに触れてみてください。
LEON レオン を今すぐ見たい方へ。
LEON レオン を手元に置いておきたい方へ。
新しい職場で新しい出会いを探してみたい方へ。

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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