ソナチネ×死生観:村川の最後、その考察

夕璃
夕璃

大学生の頃、深夜の映画番組で何気なく観たのが今作との出会い……だったかな。
そう大きな物語があるわけでもないのに不思議と心をつかまれた本作。
そして、唐突なラストシーン……。
改めて視聴し、ケアマネと死生観、そしてずっと引っかかっていたラストシーンについて考えてみました。

映画ソナチネ 物語の概要(あらすじ)

北島組傘下の村川組の組長、村川(ビートたけし)。シャバ代を支払わない人を溺死させてしまうほどの凶暴性を秘めた村川であるが、親分である北島から兄弟分の組の抗争を手伝いを命じられ、しかたなく抗争の現場、沖縄に向かう。

沖縄について早々、敵の組からの襲撃を受け味方の大半を失った村川。市街地から離れ海沿いの一軒家に身を潜めることにする。いつ顕在化するかわからない抗争、一方で平和で何もない日々、しかし村川の狂気に満ちた最後は確実に迫ってきている……。

1.ソナチネをケアマネ視点で視る:支援者の死生観が及ぼす影響

今作が描いているもの……いろいろ議論はあるとは思いますが、死生観なのではないか、と私は考えます。

劇中の村川の発言から、彼が自身の死について常に、無意識にすら考えている、もはや囚われている、とも思えます。

普通、人は村川のように自身の死について、もっと言えば死生観について考えることは少ないのではないでしょうか。

でも、私のような仕事をしている人、もっと言えば高齢者福祉に携わっている人は、一度、自身の死生観と向き合ってみるべきだと感じます。

ちょっと、事例で考えてみましょう。

ターミナル期の青井さん。
高度成長の時代をサラリーマンとして働き抜き、家族を支え続けてきました。
老後は奥さんの後押しもあり地域活動やハイキングサークルにも参加して活動性を保たれていました。
転倒がきっかけで今までのように動けなくなり、介護保険を申請、運動目的型デイに行くことに。
問題なく運動に取り組んでいたのですが、かかりつけ医にかかった際、黄疸を指摘され検査したところすい臓がんの末期であることが判明……。

青井さんを担当するケアマネとして、AさんとBさんの場合を考えてみます。
なお、お二人は経験年数もスキルもほぼ同様と仮定します。

Aさんの支援
・様々な作品に触れること、また色々な経験を経て、死は人生の一部である、という価値観を持つに至る。
・避けられない以上、死はその人らしくあるべき、と考える。
・リスクは多大にあるものの、最後にハイキングに行きたい、という青井さんの希望に即して自費の介護旅行の支援を調整。

Bさんの支援
・安全・安楽が介護の基本、という考えのもと熱心に仕事に取り組む。
・手早く療養環境と支援を調整。念のためホスピスについても情報提供。
・最後にハイキングに行きたい、という青井さんのお気持ちをよくよく伺い、自身でも葛藤しつつ、最終的にはご家族の協力を経て近隣の山のふもとをめぐるドライブに行っていただく。

正解はありません。AさんもBさんも素晴らしい支援だと思います。

ただ、死をどう考えるか、によって支援の結果が異なるように思います。

これはあくまで個人的な思いですが、支援者自身が死生観を持つことで、利用者さんの最後についてより具体的に考えられるようになるのではないか、と思います。

映画 ソナチネ をケアマネが考察したイメージ図。海辺にたたずむ、その後の村川。
村川が海辺にたたずむイメージ。Image by 夕璃

ケアマネ・夕璃の思ったこと
・人は誰でも死ぬ。
・それは避けられない。
・死について考えることは決して無駄ではない。

配信がない……なので、宅配レンタルが最も確実な視聴手段。
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2.ソナチネをケアマネ視点で観る:村川はなぜあの最後を選んだのか

この映画を見終えた人は、必ず一つの疑問に至ると思います。

それは、どうして村川はあの結末を選んだのか、ということ。

物語は終盤、それまでの静けさとは裏腹に急激に展開します。そして、あの唐突なラストに至るのですが……。

私なりに、村川の最後について考えてみました。

なお、ここから若干のネタバレがあるので未視聴の方はご留意ください。

村川の最後について考えるべきポイントは以下です。

村川は冒頭、「ヤクザ、辞めたくなったなぁ……。もう疲れたよ」と呟く。
そして中盤、「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃんだよ」とも話す。
終盤、村川は兄弟分も、親分も皆殺しにする。

つまり、①ヤクザを辞めたいと思っていた村川は、③自分をヤクザたらしめていた他者をすべて排除した、ということになります。

もっと言えば、村川の部下達もみんな、死んでしまいます。最後まで生き残ったのは自分とは直接のかかわりのないヤクザのみ。
なおかつ、その若者は逃走してしまう。

そう、村川は最後の最後で、ヤクザを辞められる状況に至るわけです。

その状況を踏まえると、②の言葉の意味がだんだん明確になってきます。

「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃんだよ」

ようやくヤクザではない自分になれた村川、願いが叶った途端、死ぬのが怖くなってしまった。

そして村川は……。

これはあくまで私説です。

色々な解釈があると思います。あっていいし、あるべき映画だと思います。

皆さんはどう、感じるでしょうか。

『正解のない選択肢』とどう向き合うか。
その問いをさらに深く掘り下げた記事もあります。

3.【まとめ】ソナチネというタイトル、に反した奥深さ

この映画、正直マイナーです。

後のHANA-BIのように脚光を浴びたわけでもなく、またアウトレイジのように話題になったわけでもありません。

そして、めちゃめちゃ人を選ぶ映画です。合わない人には、何が楽しいのか全然わからない映画。

でも、刺さる人にはとんでもなく刺さる映画でもあると思います。

ソナチネ、とは本来、以下のような意味だそうです。

イタリア語で小さなソナタを意味する言葉。
・本格的なソナタ(起承転結がはっきりした壮大なストーリー)を凝縮したような構成が特徴。
・シンプルかつ短くまとめられているため、誰にでも親しみやすく弾きやすい。
・多くの演奏家にとって最初の登竜門として愛されているジャンル。

手短く誰でも馴染める音楽……そんなタイトルを冠せられた今作が秘めているものは膨大

どうしてソナチネ、というタイトルなのか、についてすら考える余地がありそう。

ソナチネ、こんな人におすすめ!
・北野武作品を試してみたい方
・沖縄・海・雰囲気系、にピンとくる方
・作品考察が好きな方

夕璃
夕璃

ソナチネは、マイナーですが知る人ぞ知る名作。久石譲の音楽、沖縄の青、北野ブルー、そして目が覚めるような暴力……。
今作にしかないもので満ちた作品です。

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この記事を書いた人
夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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