
今よりずっと若い頃、深夜のテレビで何となく観ていた今作。
その頃はただ好きな映画に過ぎなかったのに、ケアマネとして改めて観ると、利用者さんとの関わりを考え直すきっかけになっていました。
【映画】ココニイルコト 物語の概要(あらすじ)
東京で広告代理店のコピーライターとして働いていた相葉志乃(旧・真中瞳 現・東風 万智子)は、上司と不倫関係にあった。ある時、彼の妻から手切れ金を渡された上、何の縁もない大阪支社への転勤を命じられる。
大阪支社での仕事はコピーライターではなく、なんと初めての営業。転属初日に出会ったのは同期で新人の前野君(堺雅人)。ちょっと風変わりな前野君の口癖は「ま、ええんとちゃいますか」。
傷を抱え、プライドも砕かれた相葉と、そんな彼女を放っておけない前野君は、どこか優しい大阪の街で同じ時を過ごしていく……。
1.ココニイルコト をケアマネ視点で視る:ま、ええんとちゃいますか。
不倫相手の上司に捨てられた相葉……コピーライターではなく営業部の職員としての配属……とまさに踏んだり蹴ったり。
そんな中で出会う同僚・前野君。彼の口癖は「ま、ええんとちゃいますか」。
どんな問題も、行き詰まった状況も、彼はさらっとそう言って済ませてしまいます。
こういう、一見すると無責任に思える言動も、有効なのではないでしょうか。
例を挙げてみましょう。
リハビリを頑張りすぎるAさん。
・Aさんは妻と二人暮らし。
・近隣に息子家族が在住。
・Aさんの趣味は登山。かつては地域の登山サークルの代表も務めていた。
・脳梗塞後もリハビリに積極的に取り組んでいる。
・懸命にリハビリに取り組んでいたAさんだったが、ある時から活気を失い、リハビリにも消極的になり……。
最近、リハビリを希望される方が増えてきています。
実際、リハビリを提供してくれる事業所の空きがないくらい……。
もちろんリハビリは大切なことですが、ゴール・出口の設定が重要です。
・デイケアでリハビリを担当していた理学療法士・BさんがAさんの異変を察知。
・話を伺うと、リハビリをする意味を見いだせなくなった、とAさん。
・BさんからすればAさんの身体機能は、脳梗塞後であることを思えば十分すぎるほど。
・BさんがAさんにリハビリの目的を尋ねると「再び山登りできるようになること」。
・Bさんは、「とりあえず、階段が登れればいいんじゃないでしょうか」とまずはAさんの自宅の階段の安全な上り下りを目標に再設定した。
つまりAさんの目標は高すぎた、のです。
ケアプランでもそうですが、目標の達成には、スモールステップが大切。
最初から高く遠い目標を目指すと、疲れてしまうのです。
遥か彼方を目指している時、前野君の言葉を思い出しましょう。
まずは、十分頑張っている今の自分を褒めてあげましょう。
ま、ええんとちゃいますか。

・頑張ることはいいこと。
・でも頑張りすぎるのは逆効果。
・まずは小さな一歩から。
2.ココニイルコト をケアマネが観る:典型的雰囲気系邦画
今作は、なんていうか典型的な邦画。あまり予算をかけず、目につくよう派手さもない。
ドカン! ボカン! えぇ?! という要素は一切ない、ともすれば退屈な映画です。
でも、何とも言えない良さがある映画でもあります。
例えば……
・ひと昔……ううん、二昔前の大阪の香り。
・優しく聴き心地のいいの大阪弁。
こういうのが好きな人には麻薬的な映画でもあります。
逆に、刺さらない人にはまるで空気のような映画。
いわゆる雰囲気系の映画ですが、何かピンとくる人にはぜひ触れて欲しい作品。
同じ関西を舞台にしたもの、方向性は全然別だけど雰囲気系の映画……。
好き嫌いは分れるかもだけど、刺さる人には刺さるかもしれない作品です。


3.【まとめ】ふた昔前の大阪と、『非効率』な贅沢
現代は結果と効率が重要視される時代、と感じます。
仕事も、生活も……低コストで高パフォーマンスであるべき……それはそうでしょう。
でも、でもでも、人間、それだけで生きるのはつまらない。
怠けているように見えても一歩ずつ、必要なくてもその香りや肌触りを楽しむ……今作はそういったコスパだけでは測り得ない魅力があります。
この映画、誰も知らない作品、でしょう。そして視る必要かある映画か、と言われれば微妙かも。
でも、この映画でしか得られないものは確かにあります。確かに。
ココニイルコト、こんな人におすすめ!
・名もなき無名な映画を発掘するのが好きな方。
・雰囲気系の映画に挑んでみたい方。
・昔の大阪にノスタルジーを感じる方。

ちょっと時間がある時、つまらなくっても「ま、いっか」と思える贅沢……一度お試しあれ。
ココニイルコトを手元に置いておきたい方へ
ま、いいんじゃない? と言ってくれる職場を見つけたい方へ。

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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