
『よかれと思って、が相手を最も深く傷つける。』
今作の前半、耳の聞こえないヒロイン・沙絵が100%の善意に反発する場面が頻発します。この善意のミスマッチは、私達にとっては他人事ではありません。
利用者さんのことを思った行動が逆にその心を閉ざさせてしまう……そんなデイサービスでの事例を通して、配慮の難しさと残酷さについて考察します。
【ドラマ】オレンジデイズあらすじ(物語の概要)
社会福祉心理学を学んできた大学四年生・結城 櫂(妻夫木聡)は、キャンパス内でバイオリンを弾く無愛想な女の子と出会う。彼女は萩尾沙絵(柴咲コウ)。将来を期待されたバイオリニストだったが、4年前に聴力の大半を失っていた。
櫂と沙絵は時にぶつかり合い、一方で心を通わせながら、少しずつ距離を縮めていく。
そんな中、櫂の友人である相田翔平(成宮寛貴)、矢嶋啓太(瑛太)、沙絵の友人である小沢茜(白石美帆)を含めた5人はオレンジの会を結成。大学最後の一年を共に過ごすことになる。
人生最後の学生生活の中、それぞれが描く未来は、そして櫂と沙絵の行き先は……。
1. オレンジデイズをケアマネ視点で見る:配慮のミスマッチに潜むもの
今作の放送は2004年、平成16年。平成中期。
当時はノーマライゼーションという概念がより広く浸透していった時期と重なるのではないかと思います(福祉関係の学部が新設された時期だそう)。
ノーマライゼーションとは、ざっくり言うと「障害があっても地域で暮らせる社会こそが普通だよね」という概念。
それを現実社会に落とし込もうとすると、障害を持つ方とそうでないマジョリティとのすり合わせが必要になります。
それが、今で言う合理的配慮というものだと思うのですが(例えば、自動販売機の低い位置にある硬貨投入口など)、その善意から生じた配慮が、沙絵を苛立たせたり、苦しめたりする場面が序盤に多く登場します。
こういう例って、この業界でもたまにあるんですよね。
例を挙げて考えてみましょう。
元手芸教室の先生・Aさんの場合。
・Aさんは70代の女性。頸椎症性脊髄症によって手先に軽・中度のマヒがある。
・現役の頃は手芸教室を主宰していたほど手先が器用で、個展を開催したことも。
・ただ、手つきが不自由になったことでアーティストとしての活動からは引退。
・塞ぎがちになってしまっていたAさんに対し、家族はデイサービスの利用を進める。
・家族からAさんの経歴を聞いていたスタッフは、良かれと思って、塗り絵を勧めていた。
・Aさんが不自由な手元ながらも綺麗に仕上げると、ゆっくりとした口調で「Aさん、上手に塗れましたねぇ」と声をかけた。
・しかしAさんは数回の利用の後、デイに行きたくない、と家族に話した。
あるある、なんですよねぇ……。
スタッフに悪気はないでしょう。デイサービスの余暇時間に塗り絵、はよくある取り組みでもあります。
スタッフは「Aさんは絵が上手と聞いているから、数独とかよりいいだろう」と考えていたでしょう。
しかし、Aさんにとってそれは行き届いていない配慮なのです。
むしろ数独の方がよかったのかもしれません。
かつて手芸という分野で先生だったAさんにとって、塗り絵、特に簡単なものは、プライドを傷つける要素だったのかもしれません。
マジョリティからすれば、いわば良かれと思ってする配慮。
それがぴったりはまれば、お互いに気持ちよく暮らせる一助となるのは確かなのでしょう。
しかし、そこにミスマッチがあると、お互いに不愉快な気持ちになってしまう……それが配慮の難しさなのだと思いました。

・気遣いは大切。
・でも、それが誰かを傷つけることもある。
・まずはお互いを知りあうことが大切、かも。
2.オレンジデイズをケアマネが観る: タイトルの考察、オレンジが象徴するもの
今作の脚本は北川悦吏子氏が担当されています。
同氏は平成初期の傑作・愛していると言ってくれ、の脚本担当として著名。
愛していると言ってくれでオブジェ的に扱われていたのが林檎、で今作のタイトルがオレンジデイズ……。当然、劇中でもオレンジが印象的に扱われています。
櫂や沙絵達は冒頭から就職活動に奮闘しています。つまり、学生生活の終焉・幕引きに取り組んでいるわけです。
若者であった自分、何者でもなかった自分から、社会の中の何者かになるための日々、人生のある時期の終焉に取り組む日々……だからオレンジデイズ、なのではないでしょうか。
介護というのも、長い人生という点で考えれば終幕の準備期間のようなもの。
こんなキラキラな介護をめぐる生活というのはなかなかないでしょうが、人生は一度きりしかない、とも思うと、ご自身・ご家族の介護に取り組む日々というものを少しでも有意義に感じてもらえれば……と、ふと思いました。
同じ北川氏による姉妹作、そしてターミナル期をコメディタッチで描く群像劇……。
どこか通じるものがある作品です。


3.【まとめ】オレンジ色の夕暮れを、共に歩むということ
人生の段階が進む時って、ありますよね。
学生生活の終焉、というのはある程度準備ができるものですが、介護は突然始まり、そして終わることが多いように思います。
人間、慣れないことに取り組んでいる時は心が敏感になってしまうもの。
特に高齢期というのは自尊心が傷つきやすい時期。
福祉業界、大半の人は優しい人です。
だからきっと色んな配慮をしてくれるはず。
でもそれがすべてうまく作用するとは限らない……難しいところです。
人生の最終期、人生の夕暮れ時を過ごす方々が平穏に過ごせるように……きっと私達の出来ることは多いんだと、感じさせてくれたドラマでした。
オレンジデイズ、こんな人におすすめ!
・キラキラキャンパスものが見たい方
・人生のステップを踏もうとする若者を応援したい方
・配慮について考えたい方

あれこれ言いましたが、普通に面白い青春群像ものです。
久しぶりに若い頃を思い出したいというかもぜひ!
オレンジデイズ をお手元に置いて置きたい方へ。
新しいステップを新しい職場で踏みたい方へ。

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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