本気のしるし×バーンアウト:支援者が疲れ果てる、ということ

夕璃
夕璃

「善意」が、自分を殺す時。
相手を助けたいという純粋な気持ちが、自分自身を、そして支援の現場を壊してしまう……。今作で描かれる、辻と浮世が絡まり合い落ちていく様は対人援助に関わる皆さんにとって、決して他人事ではありません。
誰も悪くないのに、なぜ支援者は「燃え尽きて」しまうのか。事例をもとに考察します。

【ドラマ】本気のしるし 物語の概要(あらすじ)

中堅文具メーカーに勤める辻は、黙々と仕事をこなしつつ、同僚の女性二人と関係を持っていた。どちらにも真剣になることなく、その場の逢瀬をやり過ごすような辻。

そんな辻は、ある夜、レンタカーが踏み切りで立ち往生した上に事故を起こしてしまう。運転席にいたのは、浮世という女性。
必死に浮世を助ける辻だったが、浮世は警察に「運転していたのは辻である」と嘘をつく。

その後も辻と浮世は偶然に再会し続け、辻は浮世が起こすトラブルに次々と巻き込まれてしまう。

にもかかわらず辻は浮世を放っておけず……。

1.本気のしるし をケアマネ視点で視る:燃え尽きる支援者

あらすじでもわかる通り、このドラマは辻が浮世に巻き込まれていく話です。

逃れようとして、それでも浮世に関わってしまう辻の姿は本編で目撃していただくとして……この、巻き込まれる、という状態は福祉の現場にも存在します。

福祉業界には、燃え尽き・バーンアウトという言葉があります。
支援に没頭して、疲れ果ててしまい支援者として仕事を続けられなくなることを言います。

こうならないために、支援者は巻き込まれないことが重要

……でも、そう分かっていても、巻き込まれてしまう、ということだってあります。

ちょっと、事例で考えてみましょう。

お願い上手のAさんと、断り切れないBケアマネ
・Aさんは独身の女性。
・脳梗塞の後遺症で右半身に強い麻痺が残っている。
・認知機能は保たれているものの、体が不自由なAさんの生活にはヘルパーさんの支援が必要不可欠。
・人懐っこい性格のAさん、多くの支援者と良好な関係を築かれる一方、ヘルパーに求める技量が高く、一般的には問題ないヘルパーさんに対しても「○○さんは○○ができない」という不満を抱かれることがある。
・ケアマネのBさんはAさんとの関係は友好的。訪問時には仕事以外の、プライベートの話で盛り上がることも。
・しかし、Bさん的には納得できかねるヘルパー交代の要望に疑問を抱くことも……。

これ、別に誰も悪くないのです。
Aさんだって、自分の望む暮らしを追求する権利がある。
Bケアマネは、Aさんの意向に沿ってサービス調整するのが仕事

しかし社会資源だって無限じゃない。それがこの問題の難しいところです。

・ヘルパー交代が続く事業所の中にはAさんの支援から撤退するところも出始める。
・そのたびに新しい事業所を見つけるBケアマネ。
・しかし地域のヘルパーさんの事業所の間に「Aさんという方は対応が難しい」といううわさが流れ始め……。
・Bケアマネの新しい事業所探しは次第に困難さを増していき……。

この状況が続くと、Bケアマネの消耗は激しくなっていく一方です。

Aさんが悪い、Bケアマネがだらしない、ということではありません。
ただ、現実として起こりえることです。

もしかすると、Bケアマネが社会資源が有限である、ということをお伝えしつつ、Aさんの生活の維持のためにもヘルパーさんに対するハードルを下げてもらうようにお願いする、ということが現実的な対応策かもしれません。

ただ、関係性がよくなりすぎるとかえって言えないこともあるということもあって……。

辻だって、浮世との関係がもう少し違っていれば、その結末は全然違ったものになっていたかも、しれません。

……いや、そんなことないか。

ドラマ 本気のしるし  をケアマネが考察したイメージ図。
紆余曲折の果て、色んな感情を乗り越えた二人、のイメージ。Image by 夕璃

ケアマネ・夕璃の思ったこと
・人間、相性がある。
・仲良くなりやすい人もいる。
・でも、距離感は大事。

破滅へと引きずり込まれる、その衝撃と快感を今すぐ。

※2026年4月時点。最新の配信状況は公式サイトにてご確認ください。

2.本気のしるし をケアマネが観る:不快が快感になる理由

普通、物語に引き込まれる、というのは、登場人物やストーリーへの共感によるもの、だと思います。

感情移入するからこそ、出来事や心情が自分のもののように感じられ、作品に没入していくのです。

しかしこのドラマは違います。
辻にも、浮世にも、全然感情移入できません

悲劇と虚言とある種の本能で周りをかき乱していく浮世。
そして、そんな浮世を放っておけない辻。

二人が絡み合い、落ちていくのは自明の理。

それなのにこのドラマには人を引き付ける何かがあります。それはきっと、人間が誰しもが持っている破滅願望と、シャーデンフロイデ

シャーデンフロイデとは、ざくっといえば他人の不幸は蜜の味、という心境。

安全地帯から辻と浮世が破滅していくさまを見て、自身の中にある破滅願望が満たされつつ、そして「うわー、ばっかだなぁ、なんでこんなことになるんだよ」というどこかすっきりした気持ちを感じる……。

この人間の歪んだ心理が、この不愉快なドラマに特有の快感をまとわせているのだと思います。

理解できない人、快感におぼれてしまう人……
他者に、そして自分に振り回されてしまう物語もあわせて。

3.【まとめ】普通じゃないドラマ、独自の快感

このドラマ、普通じゃありません
不愉快な浮世がちょっと歪んでいる辻をどんどん巻き込んでいく……どきどきもキュンキュンもしない、心洗われる美しい何かがあるわけでもない……。

でも、少なくとも私にはこのドラマ、特有の引力があります。

そして、こういった妙な引力を感じたドラマは、今作だけです。
とっても不思議なドラマ、ぜひ多くの人に体験してみてほしい!

本気のしるし、こんな人におすすめ!
・社会の酸いも甘いも味わい尽くした方。
・人間心理の影の部分に関心がある方。
・自分の歪んだ心に関心がある方。

夕璃
夕璃

よくよく考えればとってもチャレンジングなドラマ。
普通のドラマは見飽きたぞ……という方にも、ぜひこのとんでもないドラマに触れてみてください!

ドラマ版・本気のしるし を見てみたい方へ。
※初回30日間は定額プランが無料。

本気のしるし をお手元に置いておきたい方へ。

泥沼のような環境から脱出したい方へ

この記事を書いた人
夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
▼ 詳しいプロフィールは以下。▼

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