
『少数派であることは、悪いことなの?』
神童・天才児、であるがゆえに周囲とうまくいかない少年・シェルドンを描いた今作。さくっと観れるコメディでありながら、その笑いの根源を探ると……。
いい人であるがゆえに支援を要する事例を通して、マイノリティについて考察します。
ヤング・シェルドン 物語の概要(あらすじ)
1989年、アメリカ合衆国の東テキサスに天才児がいた。その名はシェルドン・クーパー、9歳。シェルドンは科学の天才であり、飛び級で高校に入学。
シェルドンの家庭はごく一般的。父はよく言えばおおらか、悪く言えば適当。母は敬虔なクリスチャンであり頑固で融通が利かない。兄は粗暴でやんちゃ。双子の妹はおませさん。ばあば(母方の祖母)は娘とは打って変わって豪快でギャンブル好き。
頭がよすぎるがあまり周囲とうまくいかないシェルドンと、そんなシェルドンに振り回されつつも温かく見守る家族の物語。
ヤング・シェルドンをケアマネ視点で視る:普通であること、そうでないこと
今作は海外の30分コメディ。むずかしい話も重たい話もなく(全くゼロというわけでもありませんが)、気軽に見てくすくす笑ってはいおしまい、というドラマです。
今作の笑いのポイントは、シェルドンと周囲とのコミュニケーションの不具合、だと思われます。
明示されていませんが、シェルドンはギフテッド(いわゆる天才)であり、ASD(自閉スペクトラム症)。
天才的な頭脳と他者の感情を推察したりするのが苦手、潔癖症、マイルーティンの存在と遵守など、彼の個性を総合すれば、そう推察されます。
同類ならスムーズにできるコミュニケーションも、相違があるとそこにずれが生じてしまう……。そこを喜劇として描いているのがこのドラマ。
私達が生きている社会には多くの人、色んな人がいます。
色んな制度、仕組みはそのマジョリティをターゲットにしていると思うのですが、それはつまり、マイノリティを拾えきれていないということで……。
私も色んなマイノリティの方にお会いしてきましたが、その中でも、ある意味最も特殊な方をご紹介します。
あまりに人がいいAさん。
・Aさんは夫を亡くし、娘2人は遠方に嫁いで一人暮らし。
・昔から面倒見がいい性格で、町内の色んな役も担い、ご近所付き合いも盛ん。
・要支援1の認定を持ち、自宅内の手すりをレンタルしつつ暮らしているAさんだが、ある時、ケアマネがAさん宅のテーブルに乗っている郵送物に気が付く。
・「高額当選!」「重要!」「急いで開封を!」……海外から届いているようにも見える、怪しさ満載の見た目。
・Aさんに尋ねると、「私はいつか、宝くじが当たるの。そのためには手付金が必要で……」。
・別の月、訪問中に電話が鳴り、それに対応するAさんの話しぶりに違和感を抱いたケアマネが訪ねたところ、「蟹屋さんなの。なかなか売れないっていうから買ってあげているんだけど、食べきれないからご近所に配っているの」。
・ケアマネが娘さんと連携して色々な詐欺について説明し注意を促しても「私の周りにはそんな悪い人はいない、私は人によくしてきたから神様が見ていてくれる」と聞き入れず……。
「このご時世、騙される方が悪い!」
「詐欺の注意喚起がされているのに甘すぎる!」
そう、Aさんに指摘するのは簡単です。でも、本当にAさんが悪いのでしょうか?
もし世界が平和で、豊かで、誰もが優しく満たされていれば、Aさんは平穏無事に暮らせたことでしょう。
たまたま今のこの社会がそうでないばかりに、Aさんは詐欺の対象となってしまいました。
これ、Aさんがこの社会においてあまりにいい人である=マイノリティであるがための悲劇です。
人と関わる仕事をしている方であれば伝わると思うのですが、社会には本当に色んな人がいます。いい意味であれ悪い意味であれ。
違うことは、それ自体に善悪はないはずです。
社会を構成するマジョリティにとって、その違いがどういうものか、どう捉えられるものか、どう定義されるか、どう評価され、どう色付けされるか、によってマイノリティの世界は一変します。
さて、シェルドンから社会はどう見えていたのでしょうか。
私達は、どう見えていたのでしょうか。

・一人一人は違っていい、はず。
・誰もが等しく生きていけるべき。
・なら、どうしてシェルドンの言動がおかしく映るのか?
ヤング・シェルドン をケアマネが観る:このドラマの愛おしさについての考察
前章ではあれこれ書きましたが、このドラマは本来、コメディです。それも、ものすごくソフトなタッチのコメディ。
もちろん今作の主役は天才児・シェルドンなのですが、彼だけでは今作が持つ温かい雰囲気というか、癖のない笑いは成立しません。
シェルドンが共に暮らしている家族がごく一般の人である、むしろとっても人間らしく、そして家族仲が(そりゃまぁ色々ありますが)とてもいいという、そのギャップ・落差が笑いのベースにあります。
いや、ほんといいキャラクターなんです、みんな。
父 ジョージ・クーパー
・シェルドン達が通う高校のアメフト部のコーチ。
・ビールとフットボール、そしてブリスケット(お肉)を何より愛する、恰幅のいいテキサスの男。
・家族の中では一番平均的、であるが故にいつも割を食ってしまい、哀愁が隠しきれない。
・それでも家族のことを愛し、支えようとしている。
母 メアリー・クーパー
・熱心なクリスチャン。故にシェルドンとその点では絶対に折り合わない(存在を証明できない神をシェルドンは認めない)。
・ではあるものの、昔はやんちゃをしていたことも(だからこそジョージと出会った)……。それが隠し切れない場面がある。
兄 ジョージ・クーパー(お父さんと同じ名前、(通称ジョージー)
・弟・シェルドンと同じ高校に通うことになる悲運に見舞われる。
・シェルドンとは対照的に学力は絶望的、ではあるが人当たりがよく商売の才能がある。のちにはそれが開花するが……。
・女の子と仲良くすることに懸命であり、それが後々大事件に発展する。
妹 ミッシー・クーパー
・シェルドンの双子の妹。変わり者の兄を嫌っている反面、必要な時には助け合ったりすることも。
・おませさんで、思春期を迎えると色々なトラブルを起こすが……。
・父・ジョージとのエピソードは涙必須。
祖母 コニー・タッカー(通称:ばぁば)
・シェルドンに次ぐ強烈キャラ。
・娘・メアリーとは打って変わってお酒、ギャンブルを楽しむ豪快なおばあちゃん。よくこの母親からあの敬虔なクリスチャンが生まれたなぁと誰しもが思う。
・シェルドンのことを「ムーンパイ(甘いお菓子)」と呼び溺愛。
・その美貌により今でも恋愛を楽しんでいる。
……みんな、愛おしいんです。いいキャラしているんです。
そんな中にシェルドンがいるのだから、何かが起きないわけがありません。
シーズンが重なるにつれものすごく大きなトラブルが起きたり、家族を揺るがす大事件も起きたりしますが……。
クーパー家を見守る私達には笑みが絶えません。
難しいこと考えずに笑える、のんびり楽しめる、そういう物語が必要な時もあるはず。
よければこちらもぜひ。


【まとめ】とっつきにくいなぁ、と感じる方へ
海外ドラマ、しかもビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則というドラマのスピンオフ、さらにシーズン7まである……。
こういうの、とっつきにくいですよね、分かります。私も最初、そうでした。
そんな皆さんは、ぜひ、第1シーズン、いや、最初の数話、ううん、第1話と2話、3話だけでも観てみてください。
おおよそ一時間で観れます。
その第3話でこのドラマで一番面白いばぁば(祖母・コニー)が出てきますし、第1話はシェルドンが兄・ジョージーとクラスメートになる一日のドタバタが、第2話はシェルドンのとんでもぶりが描かれます。
この一時間で一つも面白くなかったら、きっと相性が良くないんだと思います。
でも、少しでもくすりときたら、きっとその時はクーパー家の虜になっているはず。
シーズン7の結末はちょっと、というかだいぶショッキングですけど、それでも最後までクーパー家らしい、笑える物語です。
ヤング・シェルドン、こんな人におすすめ!
・海外コメディが好きな方。
・家族物が好きな方。
・ただただ笑いたい方。

何も考えず、さっと観てくすっと笑える、本当に楽しい作品です。
大変な毎日を送っておられる方、夜の30分、くすっとして気分を変えるのにはピッタリの作品です。
笑の絶えない職場に巡り合いたい方へ

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
▼ 詳しいプロフィールは以下。▼



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