
『毒親はいつまでも毒親なのか?』
ヤングケアラーをテーマにした、ように見える今作。しかし、実のテーマは毒親、です。
かつて望ましくない親であった方の事例を通じて、毒親について考察します。
逆火 物語の概要(あらすじ)
野島は映画監督を目指す中年男性。妻はパートをし、一般的な家庭生活は維持している。夫婦の悩みは、娘がトー横に出入りしていること。
野島は現在、助監督としてある映画製作に関わっている。それは、ヤングケアラーとしての実体験を足掛かりにし、今や経営者にまで上り詰めたARISAの自伝小説の実写映画。野島はARISAの感動的な物語に可能性を感じ、懸命に監督を支えている。
撮影開始が迫る中、ARISAの取材を進める野島は不穏な情報を掴み始める。献身的なヤングケアラーであるはずだったARISAの本当の顔、彼女にかかる疑惑……。
本当に映画を作っていいものか思い悩む野島、彼が下した決断、そしてその先の未来とは……。
映画『#逆火』🔥
— 映画『逆火』🔥公式 (@gyakka0711) April 25, 2025
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📅7/11(金)公開#内田英治 #北村有起哉 #円井わん #岩崎う大(#かもめんたる) #大山真絵子 #中心愛 #片岡礼子 pic.twitter.com/eUB6LLsaR4
逆火をケアマネ視点で視る:毒親のその後
正直、あまり知られていない作品かと思います。
そして、公式サイトに記載されているような、ARISAの正体を探る、といった先にこのストーリーの本質があるように思います。
私が思うに、今作の本当のテーマは、毒親。
高齢者福祉に関わる私達って、多分、元毒親、といった人達に会う機会も多いと思います。
そして、そういった方って、まぁそれなりの状況だったりして……。
事例で考えてみましょう。
独り暮らしのAさん。
・街の路地の奥の小さなアパートに一人で暮らす男性・Aさん。要支援1で、地域包括の職員がケアマネとして担当している。
・「昔は羽振りがよかった」「好き勝手生きてた」と武勇伝を話すことはあるものの、支援者にとっては話が分かる、やりやすい方。
・ただ、身よりはいない。「奥さんには捨てられた」「娘がいるけども何年も連絡を取っていない」と本人から聞きとっている。
・おおむね問題なく過ごされていたが、風邪が長引き入院することに。身寄りがいない、とのことであったが、病院からの要望もあって娘さんに連絡を取ることに。
・「確かに父ですが、もう縁を切っています。死んだとしても連絡をしてこないでください」と言われた娘さんはぴしゃりと電話を切ってしまう。
・それ以降、娘さんは電話に出てくれることはなかった。
……こういうケース、ほんと困るんですよね……。
支援者にとって、ご家族さんって最後の砦というか、その役割は決して支援者では埋められないものです。
どんな状況でも、たとえ強く求められても、支援者は家族の代わりにはなれません。
Aさんは支援者にとっては、威勢のいい昔話をする、あまり手のかからない利用者さんにすぎません。
ただ、きっと、Aさんは娘さんにとって、きっと毒親だったのではないでしょうか。
Aさんがずっと元気でいれればいいのですが、今後ずーっと在宅で生活できるとも限りません。
転居や施設入所が望まれる事態になることだって考えられます。
そんな時、保証人になってくれる身内がいないことは大きなネックになります。
つまり、Aさんの選択肢が狭まるということ。
人はいつまでも同じではいられません。
力と経済力で子供に圧倒的な影響力を及ぼせるのも、一時的。
いつかは立場が逆転してしまいます。
子供とは仲良くした方がいい、私がこの仕事をしていてほとんど唯一、得られた教訓です。

・毒親だって、いつか老いる。
・いかに年を取り人が丸くなったとしても、毒親であったことは変えられない。
・行動は、いつか自分に帰ってくる。
逆火 をケアマネが観る:今作における毒親についての考察
毒親、という言葉はいつからよく聞くようになったのでしょうか。ここ10年ほど、でしょうか。
Aさんが高齢なことを思えば、いや、そんなことを考えるまでもなく、毒親と呼ばれる存在はずっと昔から、それこそ文明が発達した頃から、いたのだと思います。
毒親は、二つの要素によって成立しているのではないか、と私は考えています。
①親としての責任の放棄。
②個人としての欲望の優先。
この二つを揃えた人物を親とした時、子供には目も当てられない悲劇が訪れる、のではないでしょうか。
今作において明確に親であるとされている存在のうち、主たる人物は以下の二人。
①ARISAの父親
②野島
詳細はネタバレになるので控えますが、①も②も、理想的な親であったとは言えないようです。
特に主人公である②については色々、考察の余地がある人物です。
詳細には描かれていませんが、野島はかねてより映画監督を目指しており、仕事をしっかりして給与を得、家庭にいる、といった生活ではなかったようです。
劇中でも語っていますが、野島は最低限のことはしている様子です。ちゃんとした家があり、娘は高校に通っています。
ただ、野島の娘は彼に心を閉ざし、トー横に通っている様子がうかがえます。
野島は父として娘の行動の是正、彼女の更生を試みますがことごとく失敗、二人の対立が決定的になる出来事があり……。
劇中での娘の野島に対する要求は容認できなさそうなものではありますが、そうなるに至るまでの過程があったはず。
つまり、野島の娘はただのぐれている娘ではなく、そうなるに至った子供、と捉えるべき存在です。
そして私達が辿り着くあまりに衝撃的なラストシーン……あれを思えば、野島は毒親であった、と言わざるをえません。
そこに至ると、この映画が描いているのが毒親とそれに翻弄されざるを得ない子供、に見えてくるのです。
毒親……それはあまりに非道で残酷な存在。
そんな存在を真正面から捉えた作品もあわせてどうぞ。


【まとめ】タイトルが暗示する、野島の未来
逆火、聞きなれない言葉ですが、以下のことのようです。
逆火とは……
ガス火炎を使用中に火炎が火口からガスの供給側へ戻る現象。機器類を破裂させることがある。(出典:Wikipedia)
つまり、火が逆流してしまい、結果的にその火の出現元を壊してしまうリスクもある現象……。
なるほど、と思ってしまいます。
ARISAと父親との関係と結末は物語の中で描かれています。
一方、野島の結末は、描かれていません。
ただ、このタイトルのことを思えば……。
最終盤までは淡々とした映画ですが、最後の最後で、とんでもないことになります。
その衝撃の後、きっと色んな思いが渦巻くはず。
逆火、こんな人におすすめ!
・暗い邦画が好きな方。
・映画により未知の体験を得たい方。
・暗い心境の中であれこれ考えたい方。

めちゃめちゃ地味ですが、この作品でしかできない体験がある映画です。
表面上の情報よりももっともっと深いものがある作品。
けっこうおすすめです!
厄介な同僚がいない職場で働きたい方へ

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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