
今作は私がまだ小さな頃、少し年上の従姉のそばで、よく分からないまま観ていた作品でした。
けれど大人になり、ケアマネとして改めて観た今、不便さや制約の中で人が互いを知ろうとする切実さ心に残りました。
【ドラマ】愛していると言ってくれ あらすじ(物語の概要)
紘子(常盤貴子)は、地方から上京した役者の卵。なかなか芽が出ない紘子だったが、林檎の木の下で晃次(豊川悦司)と出会う。機会を見つけて晃次に声をかける紘子だったが、晃次は無視。晃次は子供の頃の病気がきっかけで聴覚を失っていた。
東京の片隅、紘子と晃次は言葉を、年齢を、すれ違いを乗り越え関係を紡いでいく。しかし互いを想うがあまりのトラブルは決定的になってしまい……。
1.愛していると言ってくれ をケアマネ視点で視る:知りたい気持ち
今作は平成初期、聾者と健常者、かつ10歳近く年の差のある男女の恋愛という、今になって思えばなかなかとがった設定。
二人の間には色々な違いがありますが、最も大きな違いは言語の違い。
手話と口話、これは母国語の違いといっていいほどの違い。
紘子は晃次と話すため、仲良くなるため、手話を勉強します。
この相手を知りたい気持ちって、介護の仕事をしている中でも重要ではないかと思います。
知りたい気持ちがどうして大事なのか、新規依頼の初回面談、という事例を通じて考えてみましょう。
Aケアマネ:真面目で仕事熱心、効率・タイパにも厳しい。
・病院からの引き継ぎ資料をきっちり読み込み、ある程度の生活歴、病歴から見た生活の困難さを予測済。
・40分程度で初回面談で確認すべきことを聞き取り、自宅内の環境まで確認。
Bケアマネ:好奇心旺盛、だけどちょっと効率が悪い。
・病院からもらっている情報にそいつつ、改めて生活歴から今の暮らしを伺う。
・途中、利用者さんの趣味の話になり、Bさんの好奇心が刺激される。
・一時間かかったものの趣味に基づいた今後の目標を聞きとれた。ただし、自宅内の詳細な環境確認は次回に持ち越し。
ビジネスマンとしてはAさんが優秀でしょう。
ただ、Bさんはより個別的・個性的な目標を聞き出すことができました。
今後の目標、はケアプランの中心と言うべき部分ですし、目標があるからこそ取り組むべき、解決すべき課題が明確化されます。
紘子は晃次に恋をしていて、だからこそ強烈に晃次のことを知りたいと願います。
いかに好奇心旺盛なBケアマネとはいえ、紘子ほどの勢いで利用者さんのことを知りたいとは思えないでしょうが……ケアマネと利用者さんとは言え人間同士。
まずは、相手を知りたいというピュアな気持ちが大切、なのではないでしょうか。

・初回面談は聞くべきことがたくさん。
・時間も効率的に使わなきゃ。
・でもまずは、関心を持とう。
2.愛していると言ってくれ をケアマネが観る: 不便、だからこそのエモさ
今作のストーリー・構成を考える時、制限を最大限に活用しているのではないかと感じました。
平成初期という時代……FAXが最新技術? だった頃。
スマホがない……ちょっと考えられないですよね。今となってはとんでもなく不便な時代。
そして、晃次の聾者、という設定。
紘子からすれば普通に話す、という当たり前ができない、という制限。
スマホがない、ということは、ちょっとした連絡ができない、待ち合わせが難しくなる……等々によって現代では考えられない多くのすれ違いを生んでいます。
すれ違うからこそ、会う、たったそれだけのことに涙ぐましい努力をしちゃう。
会えない、言葉を交わせない、からこそ、一人の時間にあれこれ考えてしまう、ときめいてしまう……。
不便さ、制限が物語を動かす原動力になっているんです。
昔のドラマあるある、ですが、今の時代だとかえってエモい!
時を経てもいいドラマは、いいもの。
同じ脚本家の方による姉妹作、隔たりがある者同士の恋愛。
あわせてどうぞ。
3.【まとめ】平成のマスターピースは色褪せない
今となってはもうずいぶん昔のドラマ。
現代では不自然とすら思える描写、演出も多くあります。
それでも、若き日の豊川悦司さんの超人的なかっこよさ、手の美しさ、それゆえの手話の妖艶さも手伝って、時を超えてもちゃんと鑑賞に堪える作品だと思います。
惹かれ合う晃次と紘子、すれ違い、行き違いにやきもきしつつ、誰かのことを知りたいという気持ちの大切さも再確認できるドラマ……いや、いいですよ。
愛していると言ってくれ こんな人におすすめ!
・平成レトロ、当時の雰囲気が大好きな方
・手話に関心がある方
・純粋に利用者さんを知りたいと思えた頃を振り返りたい方

古いドラマですが、平成ドラマっぽい妙な軽さもなく、どっしり重たい、そしてちゃんと心を持っていかれるドラマです。
是非、機会を見つけて観てみてください。
愛していると言ってくれ を何度も見たい方へ
小説版も見てみたい方へ
まっさらな気持ちで利用者さんと向き合いたい方へ

夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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