
公開当初、映画館で見てしまったのはいい思い出。
今や鬱映画として有名になった今作ですが、ただ、ひたすらに陰惨で暗いだけの映画ではありません。
今作は、今作でしか体験できないものに満ちた、名作なのです。
【映画】ダンサー・イン・ザ・ダークのあらすじ(物語の概要)]
チェコからの移民・セルマは、12歳の息子ジーンと二人、貧しい暮らしを送っている。
セルマは先天性の病気で視力を失いつつあり、ジーンもまた遺伝により13歳までに手術しなければ失明してしまう。ただ、それまでに手術ができれば、失明は免れる。しかし、手術費は高額。
セルマは昼夜なく、身を粉にして働き続ける。ただ、愛するジーンのため。
歌い、踊ることで自らを励ましつつセルマ、貯まりつつある手術費用、そんなセルマに悲劇が迫る……。
1.ダンサー・イン・ザ・ダーク をケアマネ視点で視る:制度の網、それから漏れてしまう人
あらすじでも伝わるように、セルマに降りかかっている現実はあまりに過酷。
当時のアメリカにどんな福祉制度があったのかはわかりませんが、セルマとジーンは世の冷たい風を一身に受けているよう。
でもこれ、何も特別なことではありません。現代の日本、制度がある程度進展しているこの社会にだって、セルマのような人は確かにいます。
Aさんの場合
Aさんは高校を出て正社員として働いていました。姉であるBさんは結婚して遠方に在住。絶賛子育て中。
Aさんは母親であるCさんと二人暮らし。Cさんは長くパートをしていたものの、病に倒れてしまう。
後遺症が残り一人で家で過ごすことにリスクが生じてしまったCさん。
AさんはCさんのために退職し、パートとして再就職。
Cさんは介護保険を申請しましたが認定は軽く、また経済的な事情もあって支援は限定的。
多少脚色していますが、私が担当させていただいたケースです。いわゆるヤングケアラーの範疇に入るケースでした。
生活保護を受けるには貯金・収入がある、かといってサービスを豊富に使えるほどでもない、でも、Cさんの生活上のリスクは高い……。
無力な私には八方塞に思えました。
完璧な社会はないと思います。
どんな社会でも、制度の網から漏れてしまう人は必ずいます。
そう、セルマとジーンのように……。
完璧でない私達、全ての人を掬い上げられないのもまた事実。
ただ、どうすべきか考え続けることは放棄してはならない、気がします。
・人の世には悲劇がある。
・すべての悲劇を救えない。
・でも、考え続けることはできる、はず。
2.ダンサー・イン・ザ・ダーク をケアマネが観る:輝く悲劇、その要因と人間の業
今作は、2000年公開と、相当昔の作品。
公開当時、映画館で見てとんでもない目にあったのはいい思い出。
この映画が色んな人を打ちのめすのには、二つの要因があるように思います。
・中盤まで若干の希望があること:あくまで若干、ですけど、光が見えているのです。
・セルマの歌声:その声、響き、その美しさ……本当に素晴らしい歌の数々。
希望があり、素晴らしい歌がある、からこそ悲劇が輝くのです。
きっと人は、期待が裏切られる、周囲にそぐわないものがある、という状況に心を大きく動かされるのだと思います。
人は、平穏にあって、安全な悲劇を望むもの……惨いようですが、人間の本性の一端、ではないでしょうか。
自分に起こったら絶対嫌な悲劇を歩み続けるセルマ、その心震える歌声……そういったものに満ちているからこそ、こんな哀しい映画が現代にまで語り継がれているのだと思いました。
まごうことなく悲劇を描いている今作。
結果的に悲劇に至ったストーリー、悲しい歴史という悲劇……。
別の視点の悲劇を描いた作品のレビューです。
3.【まとめ】名作には、理由がある
当時、映画館から出てきた私はひたすら打ちのめられただけでした。
改めて見ると、福祉職が誰かを支援するためには制度が重要であること、ないと途端に非力になってしまうことに気づかされました。
それでも、福祉の制度は進化を重ねているのだと思います。
諦めたらそこで終わり。
無力な私達にできることは、考えることを諦めないことだけ。
振り返ってみると、今作は非常に奥深い作品なんだと改めて気付きました。
ただひたすらに暗く悲しいだけの映画じゃない、からこそもう四半世紀もたっているのに名の知れた映画なのでしょう。
名作には、理由があります。ちゃんと。

この作品は、確かに見るのに勇気が必要な映画です。
それでも、この映画でしか得られないものがあるのも確か。
人生経験の一つとして、ぜひ一度チャレンジしてみてください。
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夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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