【映画】This is I レビュー:自分らしさって何?

夕璃
夕璃

ちょっと時間の空いた夜、なんか最近話題になってるなーと思いつつ今作を見始めた私。その二時間後、号泣している私……。私に一体何がおきたのでしょう?? それは今もわかりません。

映画【This is I】あらすじ
アイドルになりたい、と夢見るケンジ。しかし成長とともに男の子らしい体に成長し、そのことで周囲から冷たい目で見られてしまう。時には酷いいじめにあってしまうことも……。

そんなケンジが出会ったのはショーパブ。眩いライト、綺麗な服、あでやかなダンス……そんな中でケンジは夢に向かっての一歩を踏み出す。

女性に憧れ続けるケンジはやがて、とある医師に出会う。彼は患者を救うため、タブーとされる手術をしていた……。

自分らしさのために生きる二人の人生が交わった時、その後に起きることとは……。

1.This is Iをケアマネ視点で視る:らしさ、って何?


今の現役で活躍されている、はるな愛さんの自伝的ストーリー。

私の印象では、はるな愛さんは松浦亜弥さんの個性的なモノマネをされている元気で明るい方、というイメージでした。しかし今作で語られるのはあのスポットライトを浴びるに至るまでのはるなさんの人生、その苦悩

人がその人らしく生きる、それは当たり前のことですし、そうする権利は誰にだってあるはず。
しかし、物語の大半で描かれるのは、自分らしくありたいはるなさんが噛みしめる苦悩の数々……。

どうしてはるなさんはこんなに苦労をしなきゃいけないんだ? そう思った時、ふと仕事での場面がよぎりました。

それは、転倒するご高齢の方。

トイレに行こうとして、ベットから立ち上がろうとして、転倒される方々。「こけないようにしてくださいね」は高齢者福祉に関わる私達にとって、もはや合言葉のようですらあります。


それでも転倒事故は起きてしまう。どうしてか? それは、きっと普通に歩けていた頃の自己イメージと現状のお体とのギャップ、その差、なのだと思います。

歩ける頃のイメージで動こうとして、体が追い付かず転倒してしまう……。そういう背景があるように思います。

現在と過去の自分の違いは、歩行状態にのみ表れるものではありません。一

例えば一人のびのび暮らしていた方、二人で仲良く暮らしていたご夫婦。その延長にある高齢期の生活……。変わってくることも色々あると思います。

一人でつつがなく暮らしていたのにひっきりなしにヘルパーさんが来て落ち着かない。

夫婦で生活していたのにいつの間にか夫・妻がいない。どこに行ったのかもわからない。

こういう、今までになかった出来事が起きるのが高齢期の生活だと思います。

イメージと現実のギャップは、その人らしさを損なわせるトリガー。その人らしさが喪失した時、人はそれを取り戻そうとします。

例えばヘルパーさんの訪問を拒否したり。

例えば、いなくなった夫・妻を探しに家を出て行ったり


はるなさんが自分らしさの実現に苦悩したように、ご高齢の方々も自分らしさを守るために苦悩されているのです。

私達は、あくまで転倒を防止すべきなのか。

こけることのリスクを踏まえた上で、その人らしさに寄り添うべきなのか。

答えはありません。いや、答えは人それぞれです。

御本人、御家族、そして支援者が一緒に考え、導き出すべき答えなんだと思います。

ケアマネ・夕璃の思ったこと
・人は、自分らしく生きていたい。
・自分らしさが失われると、取り戻したくなる。
・困ったら、一緒に考えよ。

2.This is Iをケアマネが観る:不可思議な感情、その快感。

今作、狙って感動をとりに行っているところはいくつかあります。もちろん、そこもちゃんと感動していいシーンなのですが、私の印象に残ったのは、ラストシーン

それ自体、特別な演出があるわけではありません。意外な終わり方でも、突飛な仕掛けがあるわけでもない。

でも、自分でも訳が分からないままが出ていました……。こういう、自分でも分からない自分の感情に出会わせてくれる作品って、すごく心に残ります。

で、あるSNSで某タレントさんが(別のシーンですが)「アイちゃん、よかったね! って思うと涙が出てきた」と話されているのを見て、納得

「あぁ、私は色んな努力が報われたはるなさんに感動していたんだ……」と。

嬉しかった反面、少しがっかりしていた私。そして、そのがっかりにまた違和感を抱く私……。

普通、人というのは疑問が解消することに感を覚える生き物だと思います。だからミステリー物はずっと人気があるし、考察・ネタバレ系の記事も求められているのだとも思います。

そしてケアマネとしての私も、原因・要因を探しがち。「○○だから××という問題が起きているんだ!」というのがケアの最短解だから。

でも、分からないことを分からないままでいる、ということにもまた別の快感があるのではないか……と思いました。

分からない、だからこそ気になる、心に残り続ける……そういうのも、作品の強みなのかもしれません。

割り切れない感情を抱えたまま、それでも生きていく。
それは映画の中だけの話ではなく、私達が日々出会う現実そのものです。
同じように『正解のない迷い』に触れたい方は、こちらの記事も覗いてみてください。

3.【まとめ】自分が自分でいる、という奇跡

はるなさんは自身の肉体と精神の性のずれ、によって多くの困難を抱えてきました。

でも、今のはるなさん、すごく輝いていますよね。

その才能、努力、そういったものが彼女を今の場所にまで至らせたとは思うのですが、はるなさんは自分らしさを勝ち取った、ともいえると思います。


自分が自分らしくいることを勝ち取る……美談のようでもありますが、ちょっと引っかかる気もします。


自分が自分でいることにコストが必要なものなの?


自分が自分でいる、ただいる、それは当然の権利でしょう。ただ、なりたい・ありたい自分になることにコストがかかるのは当然。


そう思うと、暮らしたいように暮らす、という当たり前を支える福祉という仕事も、それに携わっている私も、ちゃんと社会にとって必要な存在なんだな、と勇気づけられた気がします。

夕璃
夕璃

ケアマネとしてこの映画を見た時、私達が現場で出会う『見えない苦悩』と重なって見えました。
誰かの、そしてあなた自身の『自分らしさ』について深く考えたい時、原著にも触れてみては。

この記事を書いた人
夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
▼ 詳しいプロフィールは以下。▼

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