
このドラマに出会ったのは数年前。
軽く流し見するつもりが、あまりにも衝撃的な内容に、いつの間にか食い入るように見入ってしまったことを覚えています。
ドラマ【透明なゆりかご】あらすじ
看護師を目指して勉強中の17歳の少女・アオイは、近所の由比産婦人科で看護助手としてアルバイトを始める。
看護師志望とはいえ、アオイはまだ幼さの残る少女。そんな彼女がいきなり直面したのは中絶手術の現場……。激しく動揺するアオイ。
しかし、命の現場は待ってはくれない。 捨て子、モンスターペイシェント、流産、14歳の妊娠、そして性的暴行……。 由比産婦人科には、一筋縄では解決できない、目を背けたくなるような現実が次々と舞い込む。
アオイはその産婦人科の日常、命の営みに真っ向から向き合っていく……。

1.透明なゆりかごをケアマネ視点で視る:当たり前を演出する、透明な存在
あらすじからも伝わるように、ケアマネの私には縁遠い設定であると同時に、激重な今作。
正直、正視に堪えないお話も多々あります。胸糞ですらあるエピソードもあって……ただ、これらのエピソードに香ってくるほどのリアリティがある、それが今作のとんでもないところ。
嘘くさくない、だから、この衝撃的なエピソードの数々が、えぐすぎるリアリティを持って視聴者に迫ってくるのです。
私が最も心に残っている、いや、刺さって抜けなくなっているのは、最終盤のエピソード。
ある初産の妊婦さん、出生前の検査の結果、胎児には重い心臓病があることが判明。生まれても数日しか生きられない、という事実を前に赤ちゃんを産むかどうか、究極の選択を突き付けられる妊婦さん……。
というもの。ね、やばいほど重いのです。
私が言うのもおこがましいですが、産科の現場というのは、多分こういった激重エピソードが日常茶飯事なのでしょう。
一方、多くのお産が色々な問題、トラブルかありつつも喜ばしい、幸せな出来事として終えられているのもまた事実だと思います。
その当たり前は、表には出ない医師、看護師、助産師の方々の努力の賜物なのでしょう。語弊があるかもしれませんが、出産という人間の営みを普通に見せているのは、陰で働く専門職の方がいるおかげのはず。
これ、福祉の現場でも起きていることだとも思います。
例えば足腰が弱り認知機能も低下しているご高齢の方のお一人暮らしの一日。
朝起きて冷蔵庫に用意されているご飯をレンジで温めて食べ、デイサービスに行ってお風呂に入って社会交流をし、家に帰ったらヘルパーさんが待っていて夕食の用意とお薬をセッティング。夕飯を食べ介護ベッドで眠る……。
あなたもこんな高齢の方と街中ですれ違っているかもしれません。その方が街に溶け込めているのは、その方の生活を支える数多くの福祉専門職の方々がいるから。
まさに彼らは透明なヒーローなのです。

私達が当たり前だと思っている日常が、どれほど多くの見えない手に支えられているのか……。
その現実に、立ち会ってみては?
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2.透明なゆりかごをケアマネが観る:透明を担保する『透明感』
今作の主演は若き日の清原果耶さん。今もそうですが、透明感が持ち味の役者さんです。
今作のポイントは、産婦人科で起こるあまり知られていない(衝撃的、だけどきっとあり得るだろう)出来事をリアリティを担保しつつ描けていること。ここに嘘くささが滲まないのは本当にすごいことです。
そのリアリティにとって必要不可欠になっているキーが、清原さんが演じている主人公・アオイ。
アオイは見習い看護師。まだ看護師さんになっていない≒一般の女の子。つまり、産婦人科の内情を知らない視聴者と同じ視線を持っているのです。
であるが故にアオイの感情……驚き、ショック、喜び、悲しみ、動揺etc…は、視聴者にとって非常に身近なものとなります。だって、自分とおおむね同じ、と感じる人物が体験していることなのですから。
この一体感が今作特有の没入感を作り出しています。
そして、このアオイを演じている清原さんの初々しさ、透明感! アオイのキャラクターと持っているだろう空気感と清原さんの透明感が見事にマッチして、唯一無二の存在となっています。
これ、もし主人公がベテラン看護師さんだったら、もしアオイ役が円熟感が持ち味の役者さんだったら……今作はここまでのリアリティを持ちえていなかったと思います。
今作は清原さんという役者さんとアオイというキャラクターがぴったり重なった奇跡の上に成り立っているのです。
今作は、命を、そして同時に死を、逃げ場のない重さのまま描いています。
一方で、生きること、死ぬことテーマを扱いつつ、笑いや軽やかさという緩衝材に包んでいる作品もあります。
楽しく、でもちゃんと考えさせてくれる次の2作もおすすめ。
3.【まとめ】:透明さに守られるからこそできる体験。
産婦人科物のドラマって、ぽつぽつあると思います。そんな中にあって今作は激重×没入感強め、という、なかなかなトリッキーなドラマ。
また、リアリティのある産婦人科物ということで、多分ダメな人は絶対ダメなドラマでもあります。思わず目を背けてしまいたくなるようなシーンもちらほら、ううん、結構頻回……。
正直、見るのが辛くなる作品でもあります。
だけど、このドラマには見る価値があります。命について、もちろんうれしい、幸せな場面を描いてはいますが、一方で産婦人科でしか目撃できない沢山の悲しさ、痛み、不条理、辛さをこれでもかと届けてくれます。
そして、これは多分、現場で起こっている本当のこと。少なくともそう感じさせる、考えさせるリアリティがあります。
視聴者をドラマという透明な境界線で守ってくれつつ、現実の一端を垣間見るという稀有な体験をさせてくれる今作……。
ドラマを見ることに鑑賞以上の何かを求めている人にはきっと刺さる作品!
透明な緩衝地帯があるからこそ、目を背けたくなる現実に立ち会うことができる……。
このドラマが与えてくれるのは、感動ではなく体験です。

透明な緩衝地帯があるからこそ、目を背けたくなる現実に立ち会うことができる……。
このドラマが与えてくれるのは、感動ではなく体験です。
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