
今作は私がまだ小さな頃、少し年上の従姉のそばで、よく分からないまま観ていた作品でした。
けれど大人になり、ケアマネとして改めて観た今、不便さや制約の中で人が互いを知ろうとする切実さが、想像より重く残りました。
ドラマ【愛していると言ってくれ】あらすじ(物語の概要)
紘子(常盤貴子)は、地方から上京した役者の卵。なかなか芽が出ない紘子だったが、林檎の木の下で晃次(豊川悦司)と出会う。機会を見つけて晃次に声をかける紘子だったが、晃次は無視。晃次は子供の頃の病気がきっかけで聴覚を失っていた。
東京の片隅、紘子と晃次は言葉を、年齢を、すれ違いを乗り越え関係を紡いでいく。しかし互いを想うがあまりのトラブルは決定的になってしまい……。

1.【ケアマネ的視点】解決策より大切な『相手を知る』原動力
今作は、平成初期、聾者と健常者の、10歳近く年の差のある男女の恋愛という、今になって思えばなかなかとがった設定です。二人の間には色々な違いがありますが、最も大きな違いは言語の違いでしょう。手話と口話、これは母国語の違いといっていいほどの違いです。
紘子は晃次と話すため、仲良くなるため、手話を勉強します。そして彼のささやかなこと、色々なことを知りたいと願う……そこが前半の見どころでもあるのですが、この相手を知りたい気持ちって、介護の仕事をしている中でも重要ではないかと思います。ケアマネとしてはどうしても生活の困りごと、その解決策に目を向けがちです。これはいわば痛みに対して湿布を貼ったり痛み止めを飲んでいるようなものです。
問題の解消、あるいは解消に至らずとも徹底した対策を取ろうと思えば、トラブルや困りごとの根本に目を向けなければなりません。表層でなく真相に至ろうとする、その原動力こそ、相手を知りたいという気持ちではないでしょうか。
紘子は晃次に恋をしているわけですから知りたい気持ちは強烈でその動力は無限大。私達も同じパワーで利用者さんを知ろうというのは無理がありますが、その方の人生、趣味、考え方、暮らし方etc……色々なことにアンテナを張り、自分に何か引っかかるもの、関心があることから、利用者さんに興味を持っていくというところから始めてはいかがでしょうか。
【愛していると言ってくれ ケアマネ】

ルーティンの中でサクサク仕事をこなせるシゴデキな方にこそ、ゆっくり時間を取ってみてみてほしいドラマです!
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2.【小説家志望として】スマホなき時代、故の『輝き』
今作のストーリー・構成を考える時、制限が故の素晴らしさ、を活かした作りになっているのではないか、と感じました。
平成初期という時代、当時は当時で便利なこと(劇中でも頻繁に描かれますが、今や負の遺産となっているFAXが、便利なツールとされています)もあったのでしょうが、今という時代から見ると、スマホがない、というその一点だけでとんでもなく不便な時代です。
そして、晃次の聾者、という設定。ただ普通に口話で話す、というあったりまえのことができない、という制限。
スマホがない不便さは、ちょっとした意思の疎通ができない・ないし手間がかかる、待ち合わせが難しくなる……等々によって現代では考えられない多くのすれ違いを産んでいます。そしてそれが物語を動かす原動力になり、視聴者を引き込んでいく……。
何より聾者を演じる豊川さんの素晴らしさ! たぶん、今作を見た方はわかると思うのですが、豊川さんの手話、かっこよくないですか……? 実際の聾者の方にどう映るかわかりませんが、なんか、キラキラしてる……。
そして、豊川さんの佇まい……。かっこいい、かっこよすぎる、いけ散らかしてます。反則。
世の中、便利な方がいいに決まっています。ただ、できない・不便である、ということも決して無価値ではない、ということを感じました。それはそれでいい、手間がかかったっていい、逆にそれがいい、そういった心の余裕を持てる現代の方であれば、このレトロな平成時代初期の物語を楽しめるはずです。【愛していると言ってくれ ケアマネ】
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3.【まとめ】平成のマスターピースは色褪せない
解決策・効率ばかりを追い求めてしまう今の時代……確かに昔からすれば色々なことが便利になり、早くなり、簡潔になりました。しかし、不便な時代は確かにあったのです。そしてそんな時代にもまた、輝きがあったのです。そんな時代であるが故の輝きが。
人はいつの時代であっても魂と魂とのぶつかり合い、というような、熱量を持った、一見不合理であるような人間関係に心奪われるもの。今作もまた、そういったパッションをはらんだ作品であると思います。
このドラマ、平成初期の傑作の一つであることは誰しもが認めるところだと思います。正直、今の時代を生きる人にどう映るかは分かりません。スマホが当たり前の世代の方にとっては、もはや時代劇、昔話とそう変わりないでしょう。
だけど、そんな若い世代の方にも是非見てみてほしい! きっかけは好奇心、面白いもの見たさでもいいのです。相手を知りたい、という気持ちが生み出すもの、不便だからこその心のときめき、そういった、きっとどんな時代の人でも心奪われるものがたくさん詰め込まれたドラマです。【愛していると言ってくれ ケアマネ】

古いドラマですが、きっかけを作って一度、体験してみてください。もしかしたら、手話を勉強するきっかけになるかも?
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