
今作との出会いは……確か、まだレンタル屋があちこちにあった頃。
たまたま手に取ったこの作品は、事件も盛り上がりもない、静かな一夜だけの物語でした。
それなのに、なぜかその“何も起きなさ”が、今も心に引っ掛かり続けています。
ケアマネとして経験を重ねた今、若者たちのゆるやかなつながりは、当時とはまったく違う姿となって見えてきました。
映画【きょうのできごと a day on the planet】物語の概要
京都の大学院に進学する正道(柏原収史)の引越祝い、正道の友達である中沢(妻夫木聡)は恋人の真紀(田中麗奈)、親友のけいと(伊藤歩)をつれて正道の住むいい感じの古民家にやってきた。正道の家にはすでに彼の大学の友達・西山(三浦誠己)と坂本(石野敦士)、後輩のかわち(松尾敏伸)がいて、友達、初対面ごちゃ混ぜの飲み会が始まる。
一方、同じ日、同じ夜には壁に挟まった男(大倉孝二)、浜辺に打ち上げられたクジラを発見した女子高生(派谷恵美)もいた。
これはある寒い冬の夜にいた普通の人達の、きょうのできごと。

1.【ケアマネ的視点】日常の『安全性』の価値— 集団でいることがもたらす潜在的な『癒やし』
きょうのできごと、はその名の通り、正道や中沢を中心に、その日にいた人々のその日あった出来事を中心に描いています。ある寒い冬の一日のできごと、それがこの映画のほぼ全て。
ケアマネの視点から見ると、この何気ない一日って、大切なんだなぁ、としみじみ感じます。それは積み上げられた安全の結晶、だから。
ケアマネの仕事は、いや、高齢者福祉の事業者さんは利用者さんの普通の暮らしを目指して日々、頑張っています。日々の生活がつつがなく……今日も明日も……それが彼らの目標なのです。
また、劇中で描かれる若者達の飲み会は、集団で過ごすことのポジティブな効果を暗示しています。様々な問題、悩みごと、不安etc…を抱える個人が、同様の他者と他愛のない時間・空間を共有することで、一人では得られない癒しを獲得できるのではないか……。彼らの団欒の時間を見ているとそんなことを思います。
高齢者分野でいうとこういった効果を期待するのはデイサービス(通所介護)。女性の方は積極的に参加される方もいるのですが、男性の方ってなかなか腰が重いんですよね……。 課題です。【きょうのできごとケアマネ】

お年を召してから誰かと団らんする機会って案外少ないかも……。今作を見て、自分を受け入れてもらっている集団が持つ温もりを再確認してみてください。
\ 原作・オーディブルもチェック! /
2. 【小説家志望として】『オニバズム的な構成』が引き出す、観客の感情の『行間』
きょうのできごとは、メインの登場人物達のその日の出来事が描かれる、オニバズム的な構成で作られています。飲み会に集った若者と、彼らと同じ日を生きる人達の人生、それらが緩く、緩ーく繋がっているのも大きな魅力。
断片的なストーリーがいつの間にか繋がっている、という構成は視聴者の想像力を刺激するように思います。描かれた人物の人となり、それまでの人生を無意識に考えてしまう……いわば行間から想像させるという静かで深みのある効果を巧みに生んでいる……ように思います。
まぁ、そんな難しいことを抜きにしても、やわらかい関西弁でのやり取りは昔、仲の良かった友達の家に遊びに行ったような懐かしさ、エモさ? を感じさせてくれます。ただそれだけでこの作品を鑑賞する価値があるように思います。
そういう、ストーリー以外の独自の強みを持っている作品、好きだなぁ。【きょうのできごとケアマネ】
カテゴリー『映画』はコチラ
3.【まとめ】『事件のない一日』が教えてくれる、人生の価値と物語の普遍性
この映画の魅力は、高齢者福祉が大切に守るべき日常の安全と、物語の技術としての行間の扱い方という、二つの異なる価値観がひっそり共存している点、のではないでしょうか。
正道や中沢が、日常的な飲み会で得ている集団の癒やしは、高齢者福祉の分野では非常に重要な効果であり、ツールでもあります。彼らの何もない日常をキラキラに見せてくれるのは、大きな事件ではない、その日の出来事をオニバズム的に積み上げた構成のなせる技、な気がします。観客は物語の行間に自身のイメージから作り上げた物語を勝手に・無意識に想像し、それが強いリアリティを与えるから、ではないでしょうか。
この作品は、まぁ人を選ぶかもしれませんが、見てみいて心地いい作品です。ぜひ、彼らと同じ二時間をまったり共有してみて下さい。案外、色んな発見があるかも?【きょうのできごとケアマネ】

雰囲気系の映画ではありますが、案外、色んな発見があるかも? 古い映画ですがぜひ、機会を見つけてみてみてください。
\ 原作・オーディブルもチェック! /



コメント