
今よりずっと若い頃、深夜のテレビで何となく観ていた今作。
その頃はただの映画に過ぎなかったのに、大人になりケアマネとして改めて観ると、答えを急がず、相手の時間と余裕を大切にする関わりの価値が胸に刺さりました。
映画【ココニイルコト】あらすじ(物語の概要)
東京で広告代理店のコピーライターとして働いていた相葉志乃(旧・真中瞳 現・東風 万智子)は、上司と不倫関係にあった。ある時、彼の妻から手切れ金を渡された上、何の縁もない大阪支社への転勤を命じられる。
大阪支社での仕事はコピーライターではなく、なんと初めての営業。転属初日に出会ったのは同期で新人の前野君(堺雅人)。ちょっと風変わりな前野君の口癖は「ま、ええんとちゃいますか」。
傷を抱え、プライドも砕かれた相葉と、そんな彼女を放っておけない前野君は、どこか優しい大阪の街で同じ時を過ごしていく……。

1.【ケアマネ的視点】前野君に学ぶ、「ま、ええんとちゃいますか」という支援の形
相葉は、不倫相手の上司に捨てられた、という大きな傷を負い大阪にやってきて、コピーライターではなく営業部の職員としての配属、という逆境を見知らぬ街で過ごすことになります。
そんな中で出会う同僚、かつ同期の新人・前野君。二人の関係性を恋愛ではなく曖昧な友情、として描いていくのが今作のいいところ。
前野君の口癖は「ま、ええんとちゃいますか」。どんな問題も、行き詰まった状況も、彼はその柔らかい笑顔とその言葉で済ませてしまいます。決して突き放すわけではなく、かといってこれといった解決策を提供するでもない、ただ、隣にいてそう笑う前野君。
一見すると無責任、無為無策、とも思えますが、対人援助の場面ではこういった、いわば内包感のある突き放し、って、案外大切なのかなぁと思ったりしました。
ニーズを抱える方と支援者として出会った場合、その困りごとを解決したい、と思うのが支援者の本能というものでしょう。しかし、本来人間は、自身で問題を解決する力、レジリエンスを持っているはず。
ドラえもんのようにぽっ、と解決策をお示しすることだけが……まぁそんなことできませんが……支援者としてあるべき姿ではないのではないでしょうか。
ご本人の持っているレジリエンスを高める(エンパワメント)というような関わり、そのための余韻・間・猶予としての「ま、ええんとちゃいますか」、もまた、支援の一つなのではないかなぁと考えました。【ココニイルコト ケアマネ】

あれもこれも……と目まぐるしく解決策を探してしまう支援者の方、いや、全ての大人の方、前野君に一度、励ましてもらいませんか?
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2.【小説家志望として】隠れた雰囲気系映画の傑作? ふた昔前の大阪の街の魅力
今作は、静かで淡々とした映画。あまり予算をかけず、目につくよう派手さもない、という、邦画の一つの典型例のような作品です。
まぁ、前野君には少し意外なバックボーンもあり、それがエンディングに向けての大きなポイントにはなっていますが、基本、描かれるのは相葉と前野君との関り。それを包み込んでいるのがひと昔、いやもう一昔前の大阪の街並みです。
今やガラケーと呼ばれているケータイが最新デバイスだった頃の大阪、そこに住む人々、その佇まい・空気感そのものが前野君の「ま、ええんとちゃいますか」を体現しているかのよう。
こういう、その作品そのものの空気感を持っている作品って、刺さる人には刺さる、その香りに魅了された人はずっと囚われている、というような麻薬的な魅力を持つに至ると思います。雰囲気系映画、大好きなんですよね。【ココニイルコト ケアマネ】
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3.【まとめ】ふた昔前の大阪と、『非効率』な贅沢
現代は効率が重要視される時代、と感じます。仕事も、生活も……低コストで高パフォーマンス、それ自体は悪いことではないでしょう。でも、でもでも、今作はそういったコスパだけでは測り得ない魅力があります。
大した出来事もなく、前野君は自然に、気付かないほどに相葉さんをそっと支えるだけ……。そんな二人が生きる、ふた昔前の大阪の街並み……。
今作は、言ってしまえば非効率的な映画かもしれません。でも、もしかしたらあなたの心に何か引っかかる作品になる、かもしれない……今作はそんな、意外な求心力を持っていると感じます。【ココニイルコト ケアマネ】

二時間を無駄にしてもいい、そう思える時、ぜひ今作を見てみてください。今あなたが抱えている問題、悩み、「ま、いっか」と思えるかも。
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