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真田丸×サンクコスト効果:豊臣家はどうすべきだったのか

夕璃
夕璃

『豊臣家はどうして破滅してしまったか?』
著名な脚本家、三谷幸喜氏による大河ドラマ、真田丸。日本一の兵、と呼ばれる真田幸村(信繁)を主人公に据えた、三谷氏らしくコメディもふんだんに取り入れた、非常に見やすい大河ドラマです。
中盤以降、物語は豊臣家にフォーカスを当てていくことになるのですが、その繁栄と滅亡の過程を見ていると、色々と考えることがありました。
捧げてきた自身にすがってしまう方の事例を通じ、賢明な決断の痛みについて考察します。

真田丸 物語の概要(あらすじ)

時は天下統一目前の織田家が武田家を滅ぼそうとする頃(1582年)、信濃の国(現在の長野県)にある若者がいた。
その名は真田信繁(堺雅人)、のちに大坂の陣で徳川家康の本陣に突撃し、日本一の兵と評されることになる男。

若き日の信繁は父・真田昌幸(草刈正雄)の背中を見て育つ。真田家の領地は北の上杉家、南の徳川家と北条家という大大名の領地の狭間にあり、主家であった武田家の滅亡後、昌幸は心中と裏切りを繰り返し何とか真田家を守り抜く。

そんな父に多くを学んだ信繁は、一介の国衆の次男坊から豊臣家と徳川家の最終決戦において豊臣方の実質的な総司令官を務める男にまで成長する。

これは、そんな信繁の、そして彼と関わることになる多くの人々の物語……。

真田丸 をケアマネ視点で視る:損切り、という賢明な痛み

三谷幸喜氏の大河ドラマとしては2004年の新選組! 以来の第二作目。
三谷氏が主人公に選んだのは真田信繁(幸村)という、一般的には徳川家康の仇敵として、彼を追い詰めた勇猛果敢な人物というイメージの強い人物。

ただ、信繁の名が轟くことになる大阪の陣は戦国時代に幕を引く戦いであり、彼の人生の最終盤。ドラマでの多くは彼の成長、そして彼が豊臣家に大きく関わっていく過程を描きます。

豊臣家、それは豊臣秀吉という光と闇を併せ持った傑物が文字通り一から作り上げ、一時は日本を制し、その最後に眩い輝きを見せた大きな権威でした。 
信繁は数奇な運命に導かれ、豊臣家の生き残りをかけた戦いに身を投じることになのですが……。

ドラマを見てみて思うのは、豊臣家の滅亡が必然であった、ということ。
色々な脚色や演出は当然あるでしょうが、豊臣家の繁栄と、その存続というのは全く別のマインド・対策が必要だったのだ、ということ。

豊臣家が滅亡を逃れるために必要だったこと、それは損切り、だと思います。

事例をもとに検討してみましょう。

10年超の介護に縛られる長女・Aさん。
・Aさんは50代の女性。60代で脳梗塞で倒れた父を助けるため、自身のキャリアもプライベートも後回しにして介護に専念してきた。
・現在、父親は80代。体の不自由さに加えて重度の認知症を併発、要介護4の認定。
・長年、Aさんの献身的な介護で父親の生活が成り立っていたが、夜間の覚醒や介護への抵抗が始まり、Aさんの疲労は肉体的にも精神的にも限界を迎えている。
・担当ケアマネジャーは、Aさんが倒れる前に特別養護老人ホームなどの施設入所を提案。
・Aさんは「私は10年も父に尽くしてきた」「父の介護は私にしかできない」「今更他人に預けたりできません」と拒否。
・ケアマネは「Aさんが倒れたら元も子もない」「今であれば色んな施設からよりいい所を選択できるかもしれない」と何度も説得を試みるが、Aさんは「最後まで私が家で看る」と聞く耳を持たない。
・やがてAさんはついに過労で倒れてしまい、父親はケアマネの対応によって何とか施設に入居。
・しかしその施設はAさんにとって遠方であり、なかなか面会もままならない場所だった……。

私達はご本人、ご家族とお話ししていて……

「今このタイミングでこうしておけばいいのになぁ」
「そっちよりこっちの方が後々楽なんだけどなぁ」

と感じることは多々あります。
もちろん提案はしますが、多くの場合は、私達の提案ではない方(ご本人、ご家族のご希望)を選択されます。
それは仕方ない、それが皆様の選択。

その、私達にとってのじゃない方の選択、の中には、もしかすると

・今までこうしてきたんだから、今更別の方法に切り替えられない。

というような思いがあるのかもしれない、と思いました。

人間には、今まで支払ってきたコストを思うと賢明と思える判断も選択できない、という心理があります。

それをサンクコスト効果と言います。

Aさんもまた、今まで自分の人生を捧げて来たのだから今更父の介護を他人に任せられない(もし父を施設に預けたら、今までの私の労力が無駄になる気がする)、という思いがあったのでしょうか。

ケアマネの提案のあった段階で施設選びを始めていたら、Aさんの近所にあった施設に入所できたかもしれません。
Aさんが父の在宅介護にこだわったがために、結果的に遠い施設に入居することになりました。

豊臣家も同じこと。
ドラマを見ていると感じますが、豊臣家には生き残るタイミングは何度かありました。
その一つが、大坂城を明け渡して徳川幕府内の一大名として存続すること。

しかし豊臣家の人達はそれを選択できませんでした。
きっとそこには、サンクコスト効果があったのだろうと、私は思います。

豊臣家の人々の気持ちも分かります。筋で言えば徳川家は豊臣家の家臣であり、豊臣家の握っていた権力をあの手この手で奪ったのは徳川家。
その手下になるなんて受け入れがたかったでしょう。

そんな豊臣家が迎えたのは滅亡という悲劇……。

こうすべき、と分かっていても選べない、それが人間の悲しさであり、また歴史の面白さでもあると思います。

ドラマ・真田丸 のイメージ図。
このドラマの名台詞。それでは各々、ぬかりなく。Image by 夕璃

ケアマネ・夕璃の思ったこと
・人生は、過去の延長にある。
・失うことは、怖い。
・賢明な判断には、時に痛みが伴う。

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真田丸 をケアマネが観る:豊臣家におけるサンクコスト効果についての考察

サンクコスト効果とは、以下のように定義されています。

・すでに費やしてしまい、どんな決断をしても二度と戻らないお金や時間、労力に執着してしまう心理のことを指す。
・本来、最も合理的な選択は未来を見て判断すべきなのに、これまでの苦労や投資を無駄にしたくないという執着から引き際を見誤り、合理的な判断ができないどころか最悪の決断をしてしまう場合もある。(Wikipediaを参考に筆者要約)

豊臣家がこの好例ではないか、という私の知見は前述のとおりです。

今作の中で、この効果に陥ることなく乱世を潜り抜けた人物がいる、と思います。
それは信繁の父・真田昌幸。表裏比興の者と評されている名将。

昌幸がそう評されることになるに至ったことを理解するには、彼が立たされていた苦境を理解する必要があります。

昌幸は、信濃の国の小さな領地を守る国衆でした。そんな彼を取り囲んでいたのは、北の上杉、南の徳川と北条、という大大名たち。
昌幸が守るべき領地は、彼らの領土争いのちょうど中間地点にあったのです。

いわば空腹のライオンたちの間に置かれた肉のようなもの。

武力で領土を守り抜くのは到底、無理。
なので昌幸は臣従と裏切りを繰り返すことでのらりくらりと大大名たちの間を生き延びる選択をします。

これ、豊臣家と対照的だと思いませんか? 過去の栄光とプライドを捨てられず滅亡に至った豊臣家と、武士の名誉や体面といったものを捨て、生き延びるという実利を追求した昌幸。

サンクコスト効果は、支払ったコストへの執着、によって生じます。

豊臣家は背負っていたものが大きかった、昌幸は一介の国衆に過ぎなかった、というのはちょっと違うと思います。

もし豊臣家の首脳の中に

・もう過去にすがっていても仕方ない。
・歯向かってもぶっちゃけ、勝てない。
・徳川家に頭を下げるのが賢明。


と判断できる者がいれば、豊臣家においてサンクコスト効果は生じなかった、と言えるでしょう。

歴史を振り返る時、つくづく思うのは、歴史は人の記録である、ということ。
豊臣家が滅んだのは、サンクコスト効果の影響ではなく、痛みを含んだ賢明さを実現できる人物がいなかった……そう見えてくる気がします。

ドラマを通じて心理学におけるさまざまな効果・説を実感できることもあります。
そういった作品たちもぜひ。

【まとめ】あれこれ考えず楽しめる大河ドラマ

今回は豊臣家におけるサンクコスト効果について考察する内容になりましたが、そんなこと考える必要もなく、歴史物としてちゃんとエンタメしている大河ドラマとなっています。

特に昌幸! 彼が本当にいい仕事しています。途中から昌幸を見たいがために画面を見ている自分に気が付きました。

まさに、主役を食う脇役とは彼のこと。

なので彼が退場してからは面白みに欠ける点は否めないのですが……それでも、最終回は息を呑む展開ですし、ところどころに笑いどころもあって、結構初心者向けの大河ドラマなのではないかと思います。

真田丸、こんな人におすすめ!
・戦国時代の後半をじっくり見たい方。
・真田幸村という人物に興味がある方。
・真田昌幸を愛でたい方。

夕璃
夕璃

戦国時代の知識がない、大河ドラマ初挑戦、という方にピッタリな大河ドラマだと思います!
50話という超長丁場ですが、毎晩一話を見る、という楽しみ方もできる作品、お勧めです!

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真田丸をお手元に置いておきたい方へ

サンクコスト効果のない職場で働きたい方へ

この記事を書いた人
夕璃:介護支援専門員(歴10年以上)
居宅介護支援事業所の管理者として勤務。社会福祉士、精神保健福祉士の資格保有。
小説家になりたくて、某新人賞で二次選考突破。今も挑戦中。
ケアマネとして、福祉、ケア、支援etc…といった視点でドラマ・映画等をレビューしています。
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