
京都・祇園……行くことはできても、中に入り込むことのできない世界。
今作の舞台は、まさにそのど真ん中。
見始めてすぐ、私はこれはただ可愛いだけの物語ではないと確信しました。
汎用性を失うことで成り立つ世界が、ケアマネとしての私に強く引っ掛かりました。
ドラマ【舞妓さんちのまかないさん】物語の概要
雪深い青森で生まれ育ったキヨ(森七菜)とすみれ(出口夏希)は、修学旅行で京都・祇園に訪れ、舞妓さんに憧れを抱く。中学を卒業し、夢を追って祇園に出てきた二人、すみれはめきめき頭角を現していくが、キヨは失敗続き。
青森に帰される直前になって置屋(舞妓さん達が共同生活を送る家)のお料理番・まかないさんが腰痛で急遽引退することになり、キヨがその後を継ぐことになる。
こうして、キヨは祇園という花街でまかないさんとして生きることになるのだが……。
1. 【ケアマネ的視点】『華やかさの裏の過酷さ』— 特殊な社会がもたらす『汎用性の喪失』
今作で描かれる花街の世界は、美しい文化を体現していると同時に、一般的な社会システムとは隔離された特殊な社会です。ケアマネの視点から見ると、そこに生きる人々のキャリアパスは、もし失敗したり、年を重ねて引退したりした場合、別の環境への適応が困難になるという汎用性の喪失という大きなリスクを伴います。
実際に、中卒というスタート地点から特殊な環境の中、偏った技能だけでキャリアを積むことは、普通の社会での転職やセカンドキャリアの形成を極端に難しくします。
これは、福祉の現場で問題となる社会からの孤立や貧困リスクに直結する懸念です。全ての芸妓さんが置屋の女将さんや芸のお師匠さんになれるわけではありません。華やかさの裏には、そのようなリスクを抱えながら生涯の一時期を捧げる人々が数多いるのです。
一方、ケアマネも汎用性を大事にしなければなりません。もちろん、ケアマネとしての専門性は重要です。ここでいう汎用性とは、人と接する時のフラットさ、とも言えます。
ケアマネは、どんな方と出会うのか予想できません。多様な利用者さんやご家族と対面する可能性があります(まぁ、地域性などによって多少の偏りがあるのが事実ですが)。どんな人ともフラットな状態で接するためには、特定の価値観に偏らず、広く一般社会に通じる汎用的な視点と、なによりフラットな心持ちを持ち続けることが重要だと思います。【舞妓さんちのまかないさん ケアマネ】

経験値を積み上げる一方で色んな人・物・出来事に慣れている方々、祇園の日常に癒されつつ、ご自身の立位置を見つめ直してはいかがでしょうか?
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2. 【小説家志望として】『虚構と現実が交錯する』— 祇園の日常描写が持つ物語の力
このドラマの最大の特徴は描写力の高さ、ではないでしょうか。この作品はまかないというタイトルを冠してはいますが、よくあるお料理系ドラマではありません。そりゃ確かにおいしそうな料理や調理過程も描写されていますが、このドラマの本質は祇園という特殊な空間の独特な空気感、生活観を非常にリアルに再現しているところです。
そのリアルさを構築する重要なピースは登場人物の描写。出戻りの芸子役の松岡茉優さんや、男衆さん役の北村有起哉は非常に秀逸。あの街で生き、決して短くない時間を過ごした人々の雰囲気をよく醸し出しています。映像の作り方、SE、環境音、ねぇさん、お母さんと呼び合うあの感じ、そして役者さん達が相まって物語に強固なリアリティを与えているように思います。
物語にリアリティを持たせるためには、ただただ現実的な描写を積み重ねればいいというわけではないのでしょう。色んなポイントにリアルさを感じる要素を置き、それが組み合わさることで現実感が表現されるのだと思います。【舞妓さんちのまかないさん ケアマネ】
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3. 【まとめ】『国の宝』を支えるリスク— 華やかさの裏にある人生の汎用性の喪失
このドラマはリアリティをもとに、祇園という特殊な世界が持つ華やかさと過酷さという二面性を同時に伝えている点にあります。
舞妓さん・芸妓さんの人生は、美しい文化を受け継ぎ・次の代に繋げるという重要な役割を担うのと同時に、一般社会とは隔離された環境でキャリアを積むことによる汎用性の喪失というとんでもないリスクを内包しています。
祇園の花街はもはや日本を代表する文化、国の宝ともいえると思うのですが、そういったものは舞妓さん・芸妓さんの、彼女達を支える周辺の専門家達のとんでもないリスクを背負った人生によって成り立っている……。このほのぼのドラマはそういった、なかなか見えてこない現実をも描いているのです。
今作は、祇園の花街という普段なかなか見ることのできない世界を感じつつ、日本の文化の担い手の光と闇も垣間見せてくれます。そういった意味でもおすすめ!【舞妓さんちのまかないさん ケアマネ】

キヨのように陰ながら色んな人を支える人にこそ見て欲しいと思います。
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